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SHICORE Talk Vol.5:お料理教室『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』主任、椎名眞知子先生に学ぶ『日本人の心と身体の健康を取り戻す「ルネッサンスご飯」』

教室主任を務める椎名眞知子先生
教室主任を務める椎名眞知子先生

みなさんこんにちは、花田景子です。自分の中に「核」を持ち、より美しく健康なライフスタイルを探るための連載、『花田景子のシコアトーク』。
第5回目は、代官山のパティスリー&お料理教室(ケーキ・フランス料理・ルネッサンスご飯*1)『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』で、教室の主任をしていらっしゃる椎名眞知子先生にお話を伺いました。

この『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』は、今から20年以上前に『バティスリー・フランセーズ そのイマジナスィオン』(柴田書店)という著書で、多くのパティシエ達を先導していらした弓田亨先生が1995年にそれまで代々木上原にあったお店を移転して開かれたパティスリーです。
椎名先生は『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』のお菓子教室の第一期生。
今ではこちらの教室の主任として、教鞭をとる傍ら、多くの料理本を出版していらっしゃいます。
代官山の『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』外観
代官山の『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』外観
代官山の『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』は、「ケーキの本当の意味での手作り」を数十年ぶれることなく追い求めているので、支店もなく、もちろんデパートの地下などにも出店されていません。
「目の届く範囲で地道にホンモノのお菓子、料理教室を運営し、健全な『日本の食』を広め伝える」ため、多店舗展開をする代わりに、料理教室、講演を地方都市にまで出掛け、「啓蒙活動」を続けていらっしゃるのです。
『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』では、フランス料理やスイーツの作り方を学べる教室がある。
『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』では、フランス料理やスイーツの作り方を学べる教室がある。
今では3000人を超える卒業生を持つ教室の主任でいらっしゃる椎名先生。私の主宰する「シコアサロン」も、3月にはこちらの「ルネッサンスご飯」の講座をお願いし、参加者の方たちに、「目からうろこ」の体験を楽しんでいただいたばかりです。
『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』で講義をされる弓田亨先生
『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』で講義をされる弓田亨先生
訳注*1…ルネッサンスご飯

日本人の心と身体を健康にする食を取り戻すため弓田先生が確立された「いりこ(煮干し)を基本とした出汁」「灰汁抜き・下茹でしない」「砂糖・みりんを使わない」料理法。
この料理法を続けている方からは、肌荒れ・くすみの改善、アトピー性皮膚炎、花粉症、潰瘍性大腸炎、がん患者の症状改善、快癒、不妊症からの出産など多数の報告があったそうです。

花田
先日は大変お世話になりました。シコアサロン「ルネッサンスご飯」に参加された方には大好評でした。実はうちでも子供たちが「皮付きのお野菜のおいしさ」を認めてくれて。大変感謝しております。さて、今日は先生ご自身のことについてお伺いしたいと思います。そもそも今やケーキ界の「巨星」ともいわれている弓田亨先生との出会いはどのようなものだったのでしょうか?
椎名

そもそもはママ友からその当時代々木上原にあった『イル・プルー』のケーキを紹介され、そのケーキを食べて衝撃を受けたのが始まりですね。当初はお菓子屋さんになろうとか、プロの世界に入るなどということはまったく頭にはなく、純粋に「このおいしいケーキを、周りの人に食べさせてあげたい!」という気持ちだけでした。その後、いろいろな機会に恵まれ、『イル・プルー』のお菓子教室の第一期生になり、フランスに研修にまで行くことになるのですが。私はとにかく、「食べること」が一番好き。その次に「作ること」が好きな人なのです。

花田
もともと『イル・プルー』は、お菓子屋さんですよね? こちらで私たちも講義を受けさせていただきましたが、どうして「ルネッサンスご飯」という名前の、しかも……
椎名

「和食」(笑)?

花田はい、なぜそのお教室を開かれているのでしょうか? 椎名

10年以上前になるかな? こちらで働いてくれるスタッフが、拘束時間が長くなるような仕事になると体力が持たなくなるという傾向が見られるようになってきたのです。それも若いスタッフですよ! 同じ仕事をしても、若い人の方が身体も心も「ダメ」になってしまう、持たないのです。いったいなぜなのだろうか。その「ダメ」になってしまう原因は「食べ物」にあると校長が気付いたことがキッカケでした。

校長はフランスに行く機会が多く、日本とフランスの「食材の違い」に気が付きました。特に日本の食材が「昔の味と違う」ということに着目したんですね。味が違うというのはイコール食材が変わってきているということ、それはつまり、食材を育てる日本の土地が荒廃しきっているという現実があったのです。

『イル・プルー』はお正月もお店をやっているので、職人さんたちの「おせち料理」を当時、私が作っていました。私たちが母親になるような時代から「お料理教室」がはやり始め、私自身も結婚前には一日に100人も参加するような料理教室の手伝いをしていました。そこでは「プロの料理人」が作るものを教えとても「丁寧な」方法=「灰汁抜き」「皮むき」を教えていました。ですから、私は自分では知識があると思っていたし、その通りにやっていたのですが、そのおせち料理を、校長からは「何の味もしない」と言われたのです。

「一番だし」「二番だし」をとったあとの昆布を捨てていたことを校長に指摘され、そこから一つ一つ「なぜ味がしないのか」の検証が始まりました。色々検証した結果、その当時では「常識」であった「灰汁抜き」「皮むき」によって食材の「栄養価」を減らしていたことがわかったのです。これが「ルネッサンスご飯」研究の始まりで、最初のキッカケはおせち料理でした。万能和風だし『ふりだし』が出来てしまったので、今では「だし」を最初からとる人が少なくなってしまいました。ですが、栄養の素として「鰹節」だけではなく「いりこ(にぼし)」も使い、それも捨てずに食べるのが、身体によくおいしいということなんです。

花田
仕事を持つ母としては「時短クッキング」に走りがちですが、大きな落とし穴があるのですね。「ルネッサンスご飯」ではいわゆる「さ・し・す・せ・そ」の基本のお砂糖、そしてみりんも一切使わないことになっています。ですが、「ルネッサンスご飯」のレシピ通りに作るとなぜか「甘い」のは、どうしてでしょうか?
「ルネッサンスご飯」の指導をする椎名先生
「ルネッサンスご飯」の指導をする椎名先生
椎名

人間の頭は、砂糖やみりんの「甘み」を「旨味」に感じ、だまされてしまうのです。強い「甘み」で、脳も身体も満足してしまうのですね。ですが、校長のお母様の「おふくろの味」では、砂糖は使っていません。砂糖やみりんを使わないから、脳も体も素材そのものの自然な甘みを感じることができますし、それで十分満足できるはずなのです。それがとても大切なことなんです。

花田お野菜の「皮」を食べる、というのも驚きましたが……。 椎名

今でこそ、栄養価の高さから「皮の重要性」を世間で言うようになりましたが、10年前に「ルネッサンスご飯」を始めたときは、生徒さんからの「つらい視線」を感じていました。まかないを任された時、野菜の「面取り」を私がやっていたら、校長から「何か変なことしている」と言われ、以降、一切しなくなりました。「ルネッサンスご飯」は、それまでの常識を覆す方法ですから驚かれますよね。でも実際に自分の娘が病気で、食べさせてあげられるものが少なかった時、「ルネッサンスご飯」で食べられるものから食べて行かせたら、病気が改善していきました。ですので、本当に食べ物は大事です。

花田
私もそれは実感しています。親方が26歳の時、高熱がでて、その原因が「カリウムが足りない」ということでした。がむしゃらに食べていたのに栄養価が足りていなかったことに衝撃を受けました。お肉の量に対して、野菜の量が足りなかったのです。バランスが良くなかった。それから二人で研究し、バランス良く食事をするということを心がけてきました。そうしたら風邪をひかなくなりました。日本古来からやってきた食生活を、見直すことが大事だということですね。

さて、福島の原発事故以来、食材、水など、子供たちの口に入るものの放射線量を気にして産地などに神経質になっているお母様方も多いのですが、何か、アドバイスをいただけますでしょうか?
椎名

小さいお子様がいらっしゃるお母様がそのことを気になさるのは当然です。ましては福島にお住まいの方にとってはとても大変な問題だと思います。現在のところは農薬と同じ様に「よく洗って」調理するということだと思います。いろいろな栄養素を満遍なく取り入れて「排出機能」を高める、身体を強くするということも大事だと思われます。

「ルネッサンスご飯」の講義を受けている私
「ルネッサンスご飯」の講義を受けている私
花田
バランス良く食べて、きちんと食材の持つものを取り入れ、生かすということですね。実は「いりこ」の大切さは、親方が前から言っていたことで、弓田亨先生と親方とは、「食に対する考え方」で同じところがあるということも大発見でした。
本日はお忙しい中本当にありがとうございました。

ちょっと上の方でまとめていらっしゃる独特のかわいらしいヘアスタイル、明るい色のエプロン姿で、どんなお忙しいときも優しく応対して下さる椎名先生。雑誌の連載や料理本の執筆に、お教室にと本当にお忙しいと思います。そのいつも変わらない安定感の源は、やはり「ルネッサンスご飯」なのだなと、心から納得してしまいます。去年のシコアサロンのクリスマスパーティーの時に差し入れて下さったケーキは、本当に秀逸でした。心に響くケーキというのでしょうか? 身体全体が「美味しい」と言っている(頭がだまされている状態ではなく(笑))この感覚。長い長い年月を「健全な食」の探求に費やされた先生方の魂が入っているからなのでしょう。弓田先生が日本の今の「食文化」に警鐘を鳴らされて執筆されていたこと、これから大人になるために身体を作っている時期にある子供たちに「何かが出来る」のは、私達母親しかありません。先生の熱心なご研究、ご探求の賜物である「ルネッサンスご飯」。大きなヒントになったことは言うまでもありません。その弓田亨先生を支え、多くの人々に「健康」な体作りのヒントを与え続けていらっしゃる椎名先生。頭が現代の料理法に切り替わってしまっていた私達に、日本の昔からの「家庭料理」、言わば先人たちの知恵を伝えようと立ち向かっていらっしゃるその姿勢。まさに「シコアマインド」ではないでしょうか?

 

椎名眞知子 氏 プロフィール
山梨県甲府市生まれ。小さい頃から菓子・料理作りに興味を抱き、短大卒業後料理学校へ。その後主婦として、母として、家庭のために料理をブラッシュアップ。その後、弓田亨のお菓子と出会い、『イル・プルー・シュール・ラ・セーヌ』のお菓子教室一期生として学ぶ。’95年より教室スタッフとなり、リュッフェル氏がオーナー・パティシエを務める『パティスリー・ミエ』他で研修。現在は教室主任として、明るい笑顔で日々やさしいルセットゥ作りに取り組み、弓田亨はじめスタッフ、生徒たちから絶大な信頼を受ける“イル・プルーの柱”的な存在。近著に『一年中いつでもおいしい いろんな冷たいデザート』『イル・プルーのパウンドケーキ おいしさ変幻自在』などがある。
2012年4月号より1年間、椎名先生の連載が『カフェ・スイーツ』誌上でスタートしました。『イル・プルー』がカフェを始めたら……そんなテーマでデザート、トレトゥール(フランス惣菜)、「ルネッサンスご飯」まで、さまざまなカフェメニューを提案していらっしゃいます。

SHICORE Food Vol.5:沖縄特産シークヮーサーを使ったオリジナル・シコアレシピ『ぶたロースのマスタード』

料理写真

材料
【材料】ー 2人分 ー ・ぶたロース … 2切れ
・塩 … 少々
・こしょう … 少々
・小麦粉 … 適宜
・にんにく … 1片
・サラダ油 … 大さじ1.5
・バター … 10g
・白ワイン … 1/3カップ
・ブロッコリー … 1株

<マスタードソース>
・水 … 1/3カップ
・A(下記材料)
┌・しょうゆ … 小さじ1
│・生クリーム … 大さじ3
│・塩 … 少々
│・こしょう … 少々
└・粒マスタード … 大さじ1
・シークヮーサー果汁 … 大さじ1

【作り方】
  1. ロース肉は筋切りして叩き、4cm角ぐらいに切り、塩こしょうする。
    小麦粉をはたく。

  2. ニンニクは薄切りにする。

  3. ブロッコリーは塩ゆでにする。

  4. フライパンにサラダ油を入れ、ニンニクを炒め、香りがでたら肉を入れて中火で焼く。

  5. 焼き色がついたらバターを加える。

  6. 白ワインを入れ、ふたをして1〜2分蒸し焼きにし、肉を取り出す。

  7. 残った蒸し汁に水を加えて鍋に移し、2/3ぐらいの分量になるまで煮詰めて、A を加えて温める。最後にシークヮーサー果汁を入れ味をととのえる。

  8. 皿に肉を盛り、7. のソースをかけ、ブロッコリーを添える。

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